構造特性係数DSとは?靭性ランクと数値(令第82条の3・告示第1792号)
ルート君
構造特性係数DSって、何を表してるの?
構造特性係数Dsは、建物の靭性と変形能力を表す係数で、必要保有水平耐力Qunの算定に使います。
構造特性係数DS(ディーエス)は、保有水平耐力計算(ルート3)で必要保有水平耐力Qunを算定する際に用いる係数です。
「建物の靭性(粘り強さ)が高いほど必要耐力を低減できる」という考え方を数値化したもので、DSが小さいほど靭性が高いことを意味します。
必要保有水平耐力Qunの算定式でDSはどう使われるのか
Qun = Ds × Fes × Qud
Qudは地震層せん断力(Co = 1.0として算定した設計用地震力)です。
DSとFesを乗じて、靭性と形状の特性を反映した必要耐力を算定します。
DSの数値は構造種別によってどう違うのか
| 構造種別 | 靭性ランク | DS値 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| RC造(ラーメン構造) | A(最も靭性が高い) | 0.30 | 帯筋・あばら筋が告示基準を満たし、終局せん断力>終局曲げ耐力相当のせん断力(曲げ破壊先行型) |
| RC造(ラーメン構造) | B | 0.35 | ランクAの条件を一部満たさない |
| RC造(ラーメン構造) | C | 0.40 | 靭性がさらに低下(せん断破壊が先行しやすい) |
| RC造(ラーメン構造) | D(最も靭性が低い) | 0.45 | 脆性的な破壊形式(せん断破壊先行型) |
| RC造(耐震壁付) | A〜D | 0.35〜0.55 | 耐震壁の靭性・損傷形式・ランクによる |
| 鉄骨造(ラーメン構造) | A(FA区分) | 0.25 | 幅厚比FA区分・梁崩壊形(全体崩壊) |
| 鉄骨造(ラーメン構造) | B(FB区分) | 0.30 | 幅厚比FB区分・梁崩壊形 |
| 鉄骨造(ラーメン構造) | C(FC区分) | 0.35 | 幅厚比FC区分 |
| 鉄骨造(ラーメン構造) | D(FD区分) | 0.40〜0.50 | 幅厚比FD区分・局部座屈が先行しやすい |
| 鉄骨造(ブレース付) | — | 0.25〜0.50 | ブレースの座屈耐力・有効細長比による |
| 木造(軸組構法) | — | 0.30〜0.55 | 壁倍率・接合部性能による |
DSはどうやって選定するのか
DSは部材ごとではなく、各層・各方向ごとに決まります。まず柱・はり・耐力壁・筋かいの各部材の種別(FA〜FD等)を判定し、次にその階で各種別の部材が負担する水平力(耐力)の割合に応じて「部材群としての種別(A〜D)」を定め、構造種別と部材群の種別の組み合わせから告示の表によりDS値を求めます。
このとき、靭性の低い部材(FD等)が負担する水平力の割合が大きいほど部材群の種別は下がり(DS値が大きくなり)、その割合が小さければ上位の種別と判定できます。単純に「最も靭性の低い1部材の値をそのまま採用する」のではなく、靭性の低い部材が階全体の挙動をどれだけ支配するか(負担割合)で決まる点に注意が必要です。
崩壊機構によってDSはどう変わるのか
RC造では「梁崩壊形(全体崩壊形)」が最も靭性が高くDs値が小さくなります。
柱崩壊形や部分崩壊形はDs値が大きくなり、必要保有水平耐力が増大します。
鉄骨造でも同様に、柱脚部での崩壊(柱崩壊形)はDs値が大きくなります。
設計では梁崩壊形を誘導する配慮が重要です。
なぜ靭性が高い構造はDS値が小さくなるのか
DS値は「靭性によって必要な保有水平耐力をどれだけ低減できるか」を表す係数です。
靭性の高い構造(変形能力が大きい)は、地震エネルギーを変形によって吸収できます。
エネルギー吸収能力が高いほど、同じ地震力に対して必要な耐力(強さ)が小さくて済むため、DS値が小さく設定されます。
逆に脆性的な(変形能力が低い)構造は、強さで地震力を受け止めるしかなく、DS値が大きくなります。
DSを小さくする設計の方向はシンプルです。靭性を高めること、つまり梁が先に降伏するよう断面を計画することに尽きます。
梁崩壊形を設計で誘導するのはなぜか
RC造では梁崩壊形(梁端が先に降伏し柱が弾性を保つ全体崩壊形)のほうが柱崩壊形より靭性が高く、DS値が小さくなります。
柱崩壊形では特定の階で柱が一斉に降伏して「層崩壊」が生じる危険があります。
梁崩壊形を誘導するには「柱曲げ耐力の和 > 梁曲げ耐力の和」という設計を行い、梁が先に降伏するよう断面計画を調整します。
試験で問われやすいポイント
- 「減衰が小さいほどDsを小さくできる」は誤り(令和2年 学科4 問94・選択肢2が不適当)。正しくは「靭性が大きいほど・減衰が大きいほどDs小」。減衰小→Ds大(不利)。
- 主要構造種別のDs最小値:鉄骨造ラーメン(幅厚比FA区分・梁崩壊形)=0.25、RC造ラーメン(帯筋満足・梁崩壊形)=0.30。いずれも全体崩壊形が条件。
- 鉄骨造の幅厚比区分(FA〜FD)とDs値は連動する。FD区分(幅厚比最大)では局部座屈が先行しやすく、Ds値が最大(0.40〜0.50)になり、ルート2での使用は不可。
一問一答
Q. Ds=0.25の構造とDs=0.50の構造では、どちらが耐震性能(靭性)が高いか?
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A. Ds=0.25の構造。Dsは小さいほど靭性が高く、同じ地震力(Qud)に対してより小さい保有水平耐力でよいことを意味する。Ds=0.50の構造は靭性が低く、Ds=0.25の2倍の保有水平耐力が必要になる。
Q. RC造で帯筋・あばら筋の告示基準を満たし梁崩壊形を確認できた場合のDS値は?
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A. 靭性ランクA(最高ランク)に相当し、DS=0.30。帯筋・あばら筋の仕様を満たしつつ終局せん断力>終局曲げ耐力相当せん断力(曲げ破壊先行型)であることが条件。
Q. 鉄骨造で幅厚比FD区分の部材を使うと何が問題になるか?
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A. FD区分は幅厚比が大きく局部座屈が先行しやすいため、DS値が最大(0.40〜0.50)となる。ルート2での使用は不可で、ルート3を採用する場合はFesと合わせてQunが大幅に増大するため設計上は不利となる。
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参照
- 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算)
- 昭和55年建設省告示第1792号(DSの数値・構造種別)
- 平成19年国土交通省告示第594号(改正後の算定基準)