1次設計と2次設計とは?何が違うのか(令第82条・令第82条の3)
ルート君
1次設計と2次設計って、何が違うの?
1次設計(稀地震動)では許容応力度計算を行い、2次設計(極稀地震動)では保有水平耐力または仕様規定による確認を行います。
現行の耐震設計は、1981年新耐震設計法で導入された2段階の設計目標を引き継いでいます。
「1次設計」では稀地震動に対して損傷しないこと、「2次設計」では極稀地震動に対して倒壊しないことを目標とします。
1次設計と2次設計はそれぞれ何を確認するのか
| 区分 | 対象とする地震動 | 設計目標 | 計算方法 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 1次設計 | 稀地震動(Co = 0.2相当・再現期間約50年) | 損傷しないこと(各部材の応力が許容応力度以内) | 許容応力度計算 | 令第82条 |
| 2次設計 | 極稀地震動(Co = 1.0相当・再現期間約500年) | 倒壊しないこと(保有水平耐力が必要保有水平耐力以上) | 保有水平耐力計算 | 令第82条の3 |
1次設計ではどんな計算を行うのか(令第82条)
1次設計では、設計用地震力をCs = Zi × Rt × Ai × Co(Co = 0.2)として算定し、各部材の応力が長期・短期許容応力度以内であることを確認します(令第82条)。
加えて、ルート2以上では層間変形角1/200以下(令第82条の2)・剛性率Rs≧0.6・偏心率Re≦0.15(令第82条の6第二号)の3項目も確認します。
2次設計ではどんな計算を行うのか(令第82条の3)
2次設計では、建物の保有水平耐力Quが必要保有水平耐力Qun以上であることを確認します(令第82条の3)。
必要保有水平耐力はQun = Ds × Fes × Qudで算定します。
Dsは構造特性係数(部材の靭性による割引係数)、Fesは形状係数(剛性率・偏心率による割増係数)です。
ルートによって1次・2次設計の扱いはどう変わるのか
建物の規模に応じた構造規定の適用区分(小規模・中規模・超高層)と構造計算の関係は、国土交通省の資料(下図)でも整理されています。
| 計算ルート | 1次設計(令第82条) | 2次設計(令第82条の3) |
|---|---|---|
| ルート1 | 実施 | 不要(規模制限で代替) |
| ルート2 | 実施 | 不要(層間変形角・剛性率・偏心率の確認で代替) |
| ルート3 | 実施 | 実施(保有水平耐力の確認) |
| 限界耐力計算 | 損傷限界で対応 | 安全限界で対応(令第82条の5) |
層間変形角はなぜ1次設計で確認するのか
1次設計での層間変形角制限(1/200以下)は、稀地震動に対して建物の損傷を許容限界内に抑えるための規定です。
内装仕上げ材の損傷防止が主目的であり、1/200を超えると一般に内装仕上げ材に損傷が生じるとされています。
なぜ1次・2次設計の2段階体系が必要なのか
地震動には「数十年に一度の稀地震(小〜中規模)」と「数百年に一度の極稀地震(大規模)」があり、それぞれへの目標が異なります。
稀地震では損傷を防いで繰り返し使用できる状態を維持し、極稀地震では倒壊・崩壊を防いで人命を守ることを目標とします。
この2つを同じ計算で評価することは難しいため、異なる計算法(1次:許容応力度計算、2次:保有水平耐力計算)を組み合わせています。
ルート2で2次設計が不要なのはなぜか
ルート2では保有水平耐力計算(2次設計)の代わりに、①層間変形角1/200以下、②剛性率Rs≧0.6、③偏心率Re≦0.15の3項目を確認します。
この3条件を満たすことで、建物の「変形能力が一定以上確保されている」とみなせるため、詳細な保有水平耐力計算を省略できます。
3条件のうち1つでも外れた場合はルート3(保有水平耐力計算実施)に移行します。
こうした条件制約もあり、ルート2から始める設計は多くありません。建物の規模が確定した時点でルート1かルート3を選択するのが実際の設計の流れです。
試験で問われやすいポイント
- 1次設計・2次設計の基本(令第82条・令第82条の3):1次設計=稀地震動(Co=0.2)・許容応力度確認(損傷防止)。2次設計=極稀地震動(Co=1.0)・保有水平耐力確認(倒壊防止)。ルート3のみ2次設計を保有水平耐力計算で実施。
- ルートごとの2次設計の扱い:ルート1→2次設計不要(規模制限で代替)。ルート2→2次設計不要(層間変形角・Rs・Reの確認で代替)。ルート3→2次設計実施(Qu≧Qun)。「ルート2でも2次設計が必要」は誤り。
- 層間変形角1/200以下(1次設計の確認):1次設計の確認事項(稀地震動・Co=0.2に対する計算結果)。「2次設計(極稀地震動)での層間変形角確認」は原則として行わない——2次設計の確認は保有水平耐力比較。
一問一答
Q. 1次設計と2次設計では、それぞれどのような設計地震力を用い、何を確認するか(令第82条・令第82条の3)。
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1次設計:Co=0.2の地震力に対して各部材の応力度が許容応力度以内であることを確認(損傷防止・令第82条)。2次設計:Co=1.0のQudを用いて Qun = Ds × Fes × Qud を算定し、各階でQu ≧ Qunを確認(倒壊防止・令第82条の3)。Qudは1次設計の地震力の5倍に相当する。
Q. ルート2の設計では2次設計(保有水平耐力計算)を行うか。どのような確認で代替するか。
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ルート2では保有水平耐力計算(2次設計)を行わない。代わりに①層間変形角1/200以下(令第82条の2)、②剛性率Rs≧0.6・③偏心率Re≦0.15(令第82条の6第二号)を全て満足することで2次設計の代替とする。3項目のうちいずれかが規定値を外れる場合はFes割増(ルート3で対応)が必要。
Q. 「1981年新耐震設計法」が導入した2段階設計の考え方とは何か(令第82条・令第82条の3)。
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1981年(昭和56年)の建築基準法施行令改正で導入された考え方。①稀地震動(数十年に一度)では損傷しないこと(1次設計・許容応力度)、②極稀地震動(数百年に一度)では倒壊しないこと(2次設計・保有水平耐力)という2段階の設計目標を設けた。1978年の宮城県沖地震の被害を教訓に制度化された(令第82条・令第82条の3)。
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参照
- 建築基準法施行令 第82条(許容応力度計算・1次設計)
- 建築基準法施行令 第82条の2(層間変形角)
- 建築基準法施行令 第82条の6第二号(剛性率・偏心率/ルート2)
- 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算・2次設計)
- 建築基準法施行令 第88条(地震力の算定・Co)