形状係数Fesとは?剛性率・偏心率超過時の耐力割増(令第82条の3・告示第1792号)

ルート君

形状係数Fesって、何のために必要なの?

形状係数Fesは、剛性率・偏心率が基準値を超えた場合に必要保有水平耐力を割増する係数です。

形状係数Fes(エフイーエス)は、保有水平耐力計算(ルート3)必要保有水平耐力Qunを算定する際に用いる係数です。

建物の剛性率(Rs)偏心率(Re)が基準値を下回る・超える場合に、地震力を割り増すことで安全性を確保します。

必要保有水平耐力Qunの算定式でFesはどう使われるのか

Qun = Ds × Fes × Qud

FesはDs・Qudと並ぶ3つの乗数のひとつです。

Rs ≧ 0.6 かつ Re ≦ 0.15 であれば Fes = 1.0(割り増しなし)となります。

FesはどのようにFs・Feから算定するのか(告示第1792号)

Fes = Fs × Fe として算定します。

記号 意味 条件
Fs(剛性率係数) 剛性率Rsに応じた係数 Rs ≧ 0.6 のとき Fs = 1.0、Rs < 0.6 のとき Fs > 1.0
Fe(偏心率係数) 偏心率Reに応じた係数 Re ≦ 0.15 のとき Fe = 1.0、Re > 0.15 のとき Fe > 1.0

剛性率RsによってFsはどう変わるのか

剛性率Rs Fsの値
Rs ≧ 0.6 1.0
Rs = 0.5 約1.17
Rs = 0.4 約1.33
Rs < 0.6 のとき Fs = 2.0 − Rs/0.6 として算定(告示第1792号の算式による)

偏心率ReによってFeはどう変わるのか

偏心率Re Feの値
Re ≦ 0.15 1.0
Re = 0.3 約1.50
Re > 0.15 のとき Fe = 1.0 + 0.5 × (Re - 0.15) / 0.15 として算定(告示の算式による)

Fes = 1.0(割増なし)になるにはどんな条件が必要なのか

Rs ≧ 0.6 かつ Re ≦ 0.15 の両方を満たすとき、Fes = Fs × Fe = 1.0 × 1.0 = 1.0 となります。

ルート2でRs・Reが基準値を満たしている建物がルート3に移行する場合(例:保有水平耐力の確認だけが目的の場合)、Fes = 1.0 として計算できます。

なぜ剛性率・偏心率が悪い建物は耐力を割増する必要があるのか

剛性率が低い(Rs<0.6)建物は特定の階が柔らかく、地震時にその階に変形が集中して層崩壊につながる危険があります。

偏心率が高い(Re>0.15)建物は剛心と重心がずれており、地震時にねじれが生じて特定方向の耐力が不足します。

どちらも「等分布に力が伝わる」という通常の設計前提が成立しないため、Fesで必要保有水平耐力を割増して安全側の設計を行います。

FsとFeはなぜ独立して計算するのか

Fes = Fs × Feとして独立して算定するのは、剛性率の問題(高さ方向の不均一性)と偏心率の問題(平面的な非均一性)が異なる物理現象であり、それぞれ独立して建物の安全性に影響するからです。

どちらか一方だけが良くても他方が悪ければFesは1.0より大きくなります。

「FsとFeは別々の問題を評価している」という理解が重要です。

試験で問われやすいポイント

  • Fes = Fs × Fe(剛性率係数×偏心率係数)の2成分構造。Rs≧0.6かつRe≦0.15の両方を満たすときのみFes=1.0。どちらか1つでも基準値外れるとFes>1.0。
  • 令和4年 学科4 問25(選択肢3誤):「Fesは各階に対して共通する一値」は誤り。Fs・FeはそれぞれRs・Reをもとに層ごとに算定し、各層のFesが個別の値となる。
  • Rs=0.5のとき告示算式でFs≒1.17(約17%割増)、Re=0.30のときFe≒1.50(約50%割増)となる。Rs・Re両方超過するとFesはその積となり大幅に増大する。

一問一答

Q. Rs=0.5・Re=0.12の場合のFes算定結果(大小の方向のみ)は?

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A. Rs=0.5<0.6のためFs>1.0。Re=0.12≦0.15のためFe=1.0。Fes=Fs×1.0>1.0となり、Qunが割増される。Feは1.0でもFsが1.0超のためFesは1.0超。

Q. Rs=0.65・Re=0.20の場合のFes算定結果は?

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A. Rs=0.65≧0.6のためFs=1.0。Re=0.20>0.15のためFe>1.0。Fes=1.0×Fe>1.0となりQunが割増される。Fsが1.0でも、Feが1.0超ならFes>1.0

Q. Fes=1.0にするための条件を一文で述べよ。

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A. 「Rs≧0.6 かつ Re≦0.15」の両方を同時に満たすこと。どちらか一方だけでは不十分で、両方のAND条件を満たしてはじめてFes=1.0(割増なし)となる。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算)
  • 昭和55年建設省告示第1792号(Ds及びFesを算出する方法)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。