増築時の既存部分への構造規定の遡及適用とは?(令第137条の2)

ルート君

増築するとき、既存の建物にも構造規定が適用されるの?

増築時の既存部分への構造規定の遡及適用は、令第137条の2に基づいて判断します。

建築基準法 第86条の7(既存建築物に対する制限の緩和)

政令で定める範囲内の増築・改築等については、法第20条等の規定は適用しないことができる。

既存建築物に増築・改築を行う場合、新築部分には現行の構造規定がそのまま適用されます。

一方、既存不適格建築物の既存部分への遡及適用については、法第86条の7と令第137条の2により一定の緩和が設けられています。

適用される耐久性等関係規定の範囲も確認が必要です。

増築の規模によって既存部分への遡及はどう変わるのか(令第137条の2)

増築規模既存部分への遡及
増築部分の床面積が基準時の延べ面積の1/20以下かつ50㎡以内既存部分は現行規定を適用しない(令第137条の2第三号)
増築部分の床面積が基準時の延べ面積の1/2以下(1/20超)既存部分は令第137条の2第二号に定める条件で適用除外
上記を超える増築既存部分を含む全体に現行構造規定が適用される

改築の場合はどう扱われるのか

  • 改築の場合は、改築する部分について新築と同様に現行の構造規定が適用されます。
  • 改築部分が過半を超える場合は、建築物全体として現行規定への適合が求められます。
  • 「改築」とは、建築物の全部又は一部を除却し、これと用途・規模・構造の著しく異ならないものを建て直すことをいい、法第2条第14号・第15号の「大規模の修繕」「大規模の模様替え」(主要構造部の一種以上について過半の修繕・模様替え)とは区別されます。

既存不適格建築物を増改築するとどうなるのか

  • 基準時(法令の施行または適用の際)に適法に建築された建築物が、その後の法改正により現行基準に不適合となったものを既存不適格建築物といいます。
  • 増築・改築の規模によって、既存不適格状態が維持できるかどうかが変わります。

なぜ増築規模によって既存部分への遡及が変わるのか

令第137条の2が増築規模に応じて段階的な遡及を定めているのは、財産権の保護と現行基準への適合促進のバランスを取るためです。

小規模な増築(1/20以下かつ50㎡以内)は、既存建物全体の性能への影響が軽微であるため遡及を免除します。

大規模な増築になるほど建物全体への影響が大きくなり、現行基準への適合を求めることが合理的になります。

1/20と1/2という閾値はどう使い分けるのか

令第137条の2には2つの閾値があります。

「基準時延べ面積の1/20以下かつ50㎡以内」(第三号)は最も緩い条件で、これを満たせば既存部分への遡及が完全に免除されます。

「1/20超かつ基準時の1/2以下」(第二号)は中間的な規模で、耐久性等関係規定への適合を条件に遡及が免除されます。

1/2を超える増築では既存部分を含む全体に現行規定が適用されます。

試験で問われやすいポイント

  • 令和2年 学科3 問52増築面積が基準時延べ面積の1/20以下かどうかが判断の分岐点。基準時800㎡の建築物に50㎡増築→1/20=40㎡を超えるため、増築部分に構造耐力規定が適用(「適用されない」とする選択肢が誤り)。
  • 令第137条の2第二号:増築部が1/20超かつ基準時の1/2以下の範囲では、耐久性等関係規定への適合を条件に既存部分への遡及が免除される。「1/2以下なら常に免除」ではなく「耐久性等関係規定への適合」が条件であることに注意。
  • 上記の閾値(1/201/2)は暗記必須。「50㎡以内」等の数値条件は令第137条の2の各号ごとに異なるため、号ごとに整理しておく(第三号=1/20以下かつ50㎡以内、第二号=1/20超〜1/2以下、第一号=1/2超)。

一問一答

Q. 基準時の延べ面積800㎡の既存不適格建築物に50㎡の増築をする。増築部分に現行の構造耐力規定は適用されるか(令第137条の2)。

答えを見る

適用される。基準時延べ面積の1/2040㎡を増築面積50㎡が超えているため、遡及緩和の第一号要件を満たさない(令和2年 学科3 問52)。

Q. 増築後の延べ面積が基準時の1.5倍以内であれば、既存部分への構造規定の遡及は常に免除されるか。

答えを見る

免除されるには条件(耐久性等関係規定への適合等)を満たす必要がある。規模だけで自動的に免除されるわけではない(令第137条の2第二号)。

Q. 改築部分が建築物全体の過半を超えた場合、既存部分への現行構造規定の遡及はあるか。

答えを見る

ある。改築部が過半を超える場合は建築物全体に現行の構造規定が適用される。

この記事のカテゴリの記事一覧は総則・第20条にまとめています。

最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法 第20条(構造耐力)
  • 建築基準法 第86条の7(既存建築物への制限緩和)
  • 建築基準法施行令 第137条の2(構造耐力関係の適用除外)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。