既存不適格建築物とは?構造規定の遡及適用の範囲(法第3条第2項)

ルート君

既存不適格建築物って、どういう建物のことなの?

既存不適格建築物は、法第3条第2項により改正後の規定が即時適用されない建物ですが、増築・用途変更では遡及適用が発生する場合があります。

建築基準法 第3条第2項(適用の除外)

この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、(中略)これらの規定は、適用しない。

既存不適格建築物とは、建築当時は適法であったが、その後の法令改正によって現行基準に適合しなくなった建築物のことです。

法第3条第2項により、既存不適格建築物には改正後の構造規定が原則として適用されません。

ただし増改築を行う場合は一定の範囲で遡及適用が生じます。

増築・改築すると構造規定の遡及適用はどうなるのか(令第137条の2)

増築規模ごとの遡及判断基準の詳細は令第137条の2|増築時に既存部分へ構造規定が遡及するかの判断基準を参照してください。

既存不適格建築物を維持するうえで何に注意するのか

  • 既存不適格のまま維持できる期間は、大規模な修繕・模様替えや用途変更を行わない場合に限られます。
  • 構造耐力上主要な部分の一種以上について過半の修繕・模様替えを行う場合は、「大規模の修繕」「大規模の模様替え」(法第2条第14・15号)として現行規定が適用されます。
  • 耐震改修工事は法第86条の8により別途の緩和規定があります。

なぜ既存不適格建築物を即座に現行基準に適合させる必要がないのか

法第3条第2項が即時遡及を免除しているのは、財産権の保護と社会的コストの観点からです。

建物は長期に使用されますが、法改正のたびに全ての既存建物を現行基準に適合させることは現実的に不可能で、所有者に過大な経済的負担を強いることになります。

既存不適格のまま使い続けることを認める代わりに、増改築・大規模修繕等の機会に現行基準への適合を求めるという「段階的な適法化」が法第3条の考え方です。

「大規模の修繕」と普通の「修繕」は何が違うのか

一般的な「修繕」は法第3条第2項の適用を維持したまま行えます。

一方、「大規模の修繕」(法第2条第14号)は主要構造部の一種以上の過半を修繕する場合で、この規模に達すると法第3条第3項により既存不適格の免除が消えます。

「一種以上かつ過半」という二重条件がポイントで、たとえば外壁(主要構造部)の修繕でも面積が過半に達しない場合は大規模の修繕に該当しません。

試験で問われやすいポイント

  • 令和4年 学科3 問42屋外階段は主要構造部に含まれない(法第2条第5号のかっこ書き除外)。その全面取替は「大規模の模様替え」に該当しない。「階段=主要構造部」と誤解して「過半取替=大規模の模様替え」と判断するひっかけが出題された。
  • 大規模の修繕・模様替えの定義の2条件:①主要構造部の「一種以上」かつ②「過半」を超える修繕・模様替え。どちらか一方だけでは該当しない。
  • 既存不適格状態を維持できる期間は、法第3条第3項各号に列挙された工事(増築・改築・移転・大規模修繕・模様替え・用途変更等)を行わない間に限られる。耐震改修は法第86条の8により別途緩和がある。

一問一答

Q. 屋外階段を全面取り替えする工事は「大規模の模様替え」に該当するか。

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該当しない。屋外階段は法第2条第5号の「主要構造部」に含まれないため(令和4年 学科3 問42)。

Q. 既存不適格建築物に「大規模の修繕」を行った場合、現行の構造規定は遡及適用されるか。

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される。大規模の修繕は法第3条第3項各号に列挙される工事に該当し、法第3条第2項の適用除外が消える。現行の構造規定への適合が必要となる。

Q. 「大規模の修繕」に該当するための規模条件は何か。

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主要構造部の一種以上について過半にわたる修繕(法第2条第14号)。「一種以上」かつ「過半」という2条件が両方必要。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法 第3条第2項(適用の除外)
  • 建築基準法 第86条の7(既存建築物への制限緩和)
  • 建築基準法施行令 第137条の2(構造耐力関係の適用除外)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。