違反建築物・危険な建築物への措置とは?是正命令と勧告・命令(法第9条・第10条)
ルート君
違反建築物や、古くて危険な建物には、誰がどんな命令を出せるの?
建築基準法に違反する建築物には特定行政庁が是正を命令でき(法第9条)、損傷・老朽化で著しく危険になった建築物には勧告・命令ができます(法第10条)。
いずれも命令を行えるのは特定行政庁であり、確認・検査を行う指定確認検査機関にはこの権限はありません。構造の安全を最終的に担保する行政上の手段です。
違反・危険な建築物への措置にはどんな種類があるか
| 根拠 | 対象 | 措置 |
|---|---|---|
| 法第9条 | 建築基準法令・許可条件に違反する建築物(違反建築物) | 是正命令(工事の施工停止・除却・使用禁止等) |
| 法第10条 | 損傷・腐食等で著しく保安上危険・衛生上有害(となるおそれ)の建築物 | 勧告(第1項)→命令(第2項・第3項) |
| 法第9条の4 | 保安上・衛生上必要な場合の建築物全般 | 特定行政庁による指導・助言 |
建築基準法 第9条(違反建築物に対する措置)の骨子
特定行政庁は、建築基準法令の規定又は許可に付した条件に違反した建築物・敷地については、建築主・工事の請負人・現場管理者・所有者・管理者・占有者に対して、工事の施工の停止を命じ、又は相当の猶予期限を付けて、除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
法第9条(是正命令)はどんな仕組みか
法第9条は、建築基準法令や許可条件に違反した建築物に対する是正命令の制度です。
特定行政庁は、建築主・工事の請負人・所有者・管理者などに対し、工事の施工停止や、除却・移転・改築・修繕・使用禁止・使用制限その他必要な措置を命じることができます。命令に従わない場合は、行政代執行法に基づき特定行政庁が自ら(又は第三者に)除却等を行い、その費用を義務者から徴収できます(行政代執行)。
命令にあたっては、原則として、あらかじめ相手方に意見書・証拠の提出の機会を与え、請求があれば公開による意見の聴取を行う手続きが必要です。ただし、緊急の必要がある場合には、これらの手続きを経ずに工事の施工停止などを仮に命じることができます。
法第10条(危険な建築物への措置)はどんな仕組みか
法第10条は、違反はしていないが損傷・老朽化で危険になった建築物への措置です。段階的に勧告→命令と進みます。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項(勧告) | 一定規模以上の建築物(法第6条第1項第一号の特殊建築物等)が、損傷・腐食その他の劣化により、そのまま放置すれば著しく保安上危険・衛生上有害となるおそれがある場合、相当の猶予期限を付けて除却・修繕・使用中止等を勧告できる。 |
| 第2項(命令) | 勧告を受けた者が正当な理由なく勧告に従わず、特に必要があると認める場合、相当の猶予期限を付けて勧告に係る措置を命令できる。 |
| 第3項(命令) | 第1項の建築物以外でも、建築物が著しく保安上危険・衛生上有害な状態にある場合(既存不適格建築物を含む)、所有者等に対し相当の猶予期限を付けて措置を命令できる。 |
このように、法第10条は「いきなり命令」ではなく、規模の大きい建築物はまず勧告から入り、従わない場合や著しく危険な場合に命令へ進む構造になっています。
既存不適格建築物は安全でなくても放置できるのか
既存不適格建築物は、法第3条第2項により現行規定の遡及適用が免除されています。しかし、これは「現行基準に合わせる義務がない」という意味であって、「どんなに危険でも放置してよい」という意味ではありません。
損傷・腐食・老朽化により著しく保安上危険な状態になれば、既存不適格建築物であっても法第10条の措置(勧告・命令)の対象になります。耐震性が著しく不足する建築物への対応は、耐震診断・耐震改修促進法の枠組みとあわせて、既存建築物の安全確保の重要なテーマです。
命令の前に指導・助言はあるのか(法第9条の4)
特定行政庁は、保安上・衛生上必要があると認める場合、建築物の所有者等に対して指導・助言を行うことができます(法第9条の4)。実務では、いきなり命令が出されることは少なく、指導・助言や勧告といった段階的な対応を経るのが一般的です。
実際、違反建築物への行政指導は年間数千件に及ぶ一方で、法第9条の是正命令まで至る件数はごくわずかであり、命令は重大なケースに限って用いられています。
なぜこの制度が構造安全にとって重要なのか
建築確認・中間検査・完了検査は「これから建てる・建てた直後」の建築物を対象とします。しかし建築物は長い年月の間に劣化し、また違反状態のまま使われ続けることもあります。
法第9条・第10条は、こうした「完成後・使用中の建築物」の安全を確保するための行政上の手段です。設計(確認)・施工(検査)の段階を通り抜けた後でも、構造の安全が損なわれた場合に是正・除却を命じられる仕組みがあることで、建築物の安全が継続的に担保されます。
試験で問われやすいポイント
- 命令を行えるのは特定行政庁。違反建築物への是正命令は法第9条、危険な建築物への措置は法第10条。指定確認検査機関には是正命令の権限はない。
- 法第9条(是正命令):工事施工停止・除却・移転・改築・修繕・使用禁止・使用制限等を命令。原則として意見書提出の機会・公開意見聴取の手続きを経るが、緊急時は手続きなしで施工停止等を仮に命令できる。従わない場合は行政代執行。
- 法第10条(危険な建築物):一定規模以上は第1項で勧告→第2項で命令。第3項はその他(既存不適格を含む)が著しく危険・有害な場合の命令。
- 既存不適格でも、著しく保安上危険になれば法第10条の対象。法第3条第2項の遡及免除は「危険でも放置してよい」という意味ではない。
一問一答
Q. 違反建築物への是正命令は誰が行うか。指定確認検査機関は行えるか。
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A. 特定行政庁が行う(法第9条)。指定確認検査機関は確認・検査のみで、是正命令などの行政処分は行えない。命令に従わない場合は行政代執行が可能。
Q. 法第10条の措置はどのような順序で行われるか。
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A. 一定規模以上の建築物は、まず第1項で勧告し、従わない場合に第2項で命令する。第3項は、それ以外の建築物(既存不適格を含む)が著しく保安上危険・衛生上有害な場合の命令。損傷・腐食等による劣化が前提となる。
Q. 既存不適格建築物は危険でも措置の対象外か。
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A. 対象になる。既存不適格は現行規定の遡及適用が免除される(法第3条第2項)が、損傷・老朽化で著しく保安上危険になれば法第10条の勧告・命令の対象。遡及免除は「危険でも放置してよい」という意味ではない。
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参照
- 建築基準法 第9条(違反建築物に対する措置・行政代執行)
- 建築基準法 第9条の4(保安上必要な場合の指導・助言)
- 建築基準法 第10条(著しく保安上危険な建築物等に対する勧告・命令)
- 建築基準法 第3条第2項(既存不適格建築物に対する遡及適用の制限)