新耐震設計法とは?1981年改正で何が変わったのか(昭和56年建築基準法改正)

ルート君

新耐震設計法って、何が変わったの?

新耐震設計法は1981年(昭和56年)の建築基準法改正で導入され、1次・2次設計の2段階体系・Ai分布・層間変形角・剛性率・偏心率が新設されました。

この2段階設計体系は現行の法令体系(令第82条・令第82条の3等)に引き継がれています。

改正のきっかけとなったのは地震力の評価が不十分だった1978年宮城県沖地震の被害です。

旧耐震と新耐震では何が違うのか

項目 改正前(旧耐震) 改正後(新耐震・現行)
設計地震力 Co = 0.2(一律) Co = 0.2(1次)+ Co = 1.0相当(2次)の2段階
計算方法 許容応力度計算のみ 1次:許容応力度計算、2次:保有水平耐力計算
設計目標 小地震で損傷しないこと(1目標) 小地震で損傷しない+大地震で倒壊しない(2目標)
Ai分布(地震力の高さ方向分布) なし(一様分布を仮定) Ai分布を考慮(令第88条第1項)

新耐震設計法で導入された規定はどう現行法に引き継がれているのか

1981年改正で導入された内容は、現行の施行令に以下のように引き継がれています。

新耐震の内容 現行規定
1次設計(稀地震動・Co=0.2)の許容応力度計算 令第82条(許容応力度計算)
層間変形角1/200の制限 令第82条の2第一号
剛性率Rs≧0.6・偏心率Re≦0.15 令第82条の6第二号
2次設計(極稀地震動・Co=1.0相当)の保有水平耐力確認 令第82条の3(保有水平耐力計算)
Ai分布による地震力の高さ方向分布 令第88条第1項(Ai係数)

「旧耐震」建築物とはどんな建物のことなのか

1981年5月31日以前に建築確認を受けた建築物は「旧耐震」建築物と呼ばれます。

旧耐震建築物は現行の耐震基準を満たさない可能性があるため、耐震診断・耐震改修が推奨されています。

耐震診断・改修の基準は「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)に規定されています。

旧耐震基準と新耐震基準の必要壁量の差、および実際の地震被害との関係は、国土交通省の分析報告(下図)でも示されています。

国土交通省 熊本地震における建築物被害の原因分析 旧耐震基準木造建築物の倒壊原因と必要壁量の比較
出所:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」p.5 木造建築物の倒壊の原因分析(旧耐震基準)―旧耐震基準・新耐震基準・耐震等級3の必要壁量比較と住宅性能表示制度別の被害状況。

なぜ1981年に新耐震設計法が導入されたのか

新耐震設計法の導入を促したのは1978年の宮城県沖地震です。

旧耐震基準(Co=0.2の許容応力度計算のみ)で設計された建物でも、大地震時に倒壊するケースが発生しました。

旧基準では「大地震で倒壊しない」という目標が明示されておらず、小地震での損傷防止のみを評価していたためです。

この教訓から、1次設計(小地震・損傷防止)と2次設計(大地震・倒壊防止)の2段階設計体系が導入されました。

旧耐震建築物は現在どのような扱いを受けるのか

旧耐震建築物は既存不適格建築物として法第3条第2項による適用除外を受けます。

ただし、耐震改修促進法に基づき特定既存耐震不適格建築物(病院・学校・大規模事務所等)は耐震診断・改修の努力義務が課されます。

旧耐震かどうかは「昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けたかどうか」で判断します。

試験で問われやすいポイント

  • 1981年改正の背景と内容:1978年宮城県沖地震の被害を教訓に1981年に新耐震設計法を導入。1次設計(Co=0.2・許容応力度)+2次設計(保有水平耐力)の2段階、Ai分布、層間変形角1/200、剛性率Rs≧0.6、偏心率Re≦0.15を新設。
  • 旧耐震の定義:「昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けた建築物」が旧耐震。完成日・着工日ではなく建築確認受付日が基準。1981年6月1日以降に確認を受けたものは新耐震基準適合。
  • Ai分布の導入(令第88条第1項):1981年改正で地震力の高さ方向分布にAi係数が導入された。上階になるほど・固有周期が長いほどAiが大きくなり、高層建築物では上層部の地震力が増大する(令第88条第1項)。

一問一答

Q. 旧耐震建築物とは何を基準に判定するか。1981年の改正施行日はいつか。

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建築確認受付日を基準とする。昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けた建築物が旧耐震建築物。同年6月1日以降に建築確認を受けたものは新耐震基準(1次・2次設計の2段階)に適合している。完成日・着工日ではなく確認日が基準であることに注意。

Q. 1981年の新耐震設計法が旧耐震から変えた最大のポイントは何か。

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2段階設計体系の導入が最大のポイント。旧耐震(Co=0.2の許容応力度計算のみ)から、①1次設計(稀地震動・Co=0.2・損傷防止)と②2次設計(極稀地震動・Co=1.0相当・保有水平耐力・倒壊防止)の2段階体系に移行。また地震力の高さ方向分布にAi係数を導入し、剛性率・偏心率・層間変形角の規定も新設された(令第82条・令第82条の2・令第82条の3)。

Q. Ai分布(令第88条第1項)とは何か。上階になるほどAiはどうなるか。

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Ai係数は地震層せん断力の高さ方向分布を表す係数。上階になるほど、また建物の固有周期Tが長いほど(=柔らかい建物ほど)Ai値が大きくなる。1階のAi=1.0に対して、上階のAiは1.0より大きくなる(上階で地震力が増大する)。1981年改正で導入され、高層建築物では上層部の地震力が適切に評価される(令第88条第1項)。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第82条(許容応力度計算)
  • 建築基準法施行令 第82条の2(層間変形角)・第82条の6(剛性率・偏心率)
  • 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算)
  • 建築基準法施行令 第88条(地震力の算定)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。