ルート1(鉄骨造)とは?許容応力度計算の手順と幅厚比・有効細長比の確認(令第82条)
ルート君
ルート1の鉄骨造って、何を確認するの?
ルート1(鉄骨造)は、許容応力度計算に加えて幅厚比と有効細長比を確認する計算方法です。
鉄骨造のルート1は令第82条に定める許容応力度計算で、比較的小規模な鉄骨建築物に適用されます。
許容応力度計算に加えて、幅厚比・有効細長比の確認が必要です。
ルート1ではどんな手順で計算を進めるのか(令第82条)
| 計算の手順 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①荷重・外力の算定 | 固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力を算定する | 令第82条第一号・令第83条〜令第88条 |
| ②荷重の組み合わせによる応力の算定 | 長期・短期の各荷重組み合わせで部材応力を算定する | 令第82条第二号 |
| ③許容応力度との比較 | 算定された応力が許容応力度以下であることを確認する | 令第82条第三号・令第90条・告示第2464号 |
| ④幅厚比の確認 | 圧縮材の幅厚比が告示に定める値以下であることを確認する | 告示(ルート1は平成19年告示第593号) |
| ⑤有効細長比の確認 | 圧縮材の有効細長比が令第65条の上限以下であることを確認する | 令第65条 |
鉄骨造ルート1のCo値とルート1-1/1-2/1-3の区別
鉄骨造ルート1では、許容応力度計算に用いる標準せん断力係数はCo ≧ 0.3として計算します(平成19年国土交通省告示第593号)。RC造(Co ≧ 0.2)より厳しい値が求められます。
| 区分 | 追加確認項目 | 幅厚比ランク |
|---|---|---|
| ルート1-1 | なし(許容応力度計算・幅厚比・有効細長比のみ) | 指定なし |
| ルート1-2 | 偏心率 Re ≦ 0.15 の確認が追加 | FAランク以上 |
| ルート1-3(R7.4.1新設) | 層間変形角・幅厚比等の鉄骨固有の検討が追加 | 柱FAランク・梁FCランク |
鉄骨造の許容応力度はどんな数値か(令第90条)
| 鋼材・応力の種類 | 長期許容応力度(目安) | 短期許容応力度 |
|---|---|---|
| SS400・SN400(引張・圧縮・曲げ) | 156 N/mm²(Fy/1.5) | 長期の1.5倍(235 N/mm²) |
| SS400・SN400(せん断) | 90 N/mm²(Fy/√3/1.5) | 長期の1.5倍(135 N/mm²) |
| SN490・SM490(引張・圧縮・曲げ) | 217 N/mm²(Fy/1.5) | 長期の1.5倍(325 N/mm²) |
鉄骨造ルート1で確認が必要な項目は何か
- 長期・短期荷重に対する全部材(柱・はり・ブレース・接合部)の許容応力度確認
- 柱・圧縮ブレースの幅厚比が告示上限以内であることの確認(令第65条)
- 柱・圧縮材の有効細長比が200以下であることの確認(令第65条)
- 接合部(高力ボルト・溶接)の許容応力度確認(令第67条・令第68条・告示)
- 基礎の接地圧が地盤の許容応力度以下であることの確認
ルート1が適用できる建築物の規模はどこまでか
鉄骨造のルート1(許容応力度計算のみ)で設計できる建築物は、令第36条の2の規定による小規模建築物(法第20条第1項第三号)に限られます。
高さ16mを超え、または4階以上の鉄骨造は、原則としてルート2以上が必要です(R7.4.1改正後)。なお、R7.4.1改正により高さ13m超16m以下の鉄骨造向けにルート1-3(令第81条第3項)が新設されました。
ルート1-3では許容応力度計算に加え、幅厚比・層間変形角等の鉄骨固有の検討が必要です。
鉄骨造における構造規制の合理化(ルート1-3の創設を含む)については、国土交通省の資料(下図)に概要がまとめられています。
なぜ鉄骨造では幅厚比と有効細長比の両方を確認するのか
RC造は厚みのあるコンクリートと鉄筋の複合材料で、局部的な不安定現象が生じにくいです。
一方、鉄骨造は薄い鋼板で構成された断面が多く、2種類の座屈リスクがあります。
幅厚比(告示)は板要素(フランジ・ウェブ)の「局部座屈」を防ぐための確認で、有効細長比(令第65条)は部材全体の「全体座屈」を防ぐための確認です(令第70条は柱の防火被覆で別規定)。
この2つは独立した現象であり、どちらか一方を満たすだけでは不十分なため、鉄骨造ルート1では両方の確認が義務付けられています。
試験で問われやすいポイント
- 鉄骨造ルート1の確認項目(令第82条・令第65条・告示):①許容応力度確認(令第82条第三号)②幅厚比確認(告示)③有効細長比確認(令第65条・圧縮材は200以下)の3つが必須。幅厚比(告示)と有効細長比(令第65条)の両方を確認することが鉄骨造の特徴(令第70条は柱の防火被覆で別規定)。
- SS400の長期許容応力度(令第90条・告示第2464号):長期引張・圧縮・曲げ=156N/mm²(Fy/1.5)、長期せん断=90N/mm²(≒156/√3)。短期はそれぞれ長期の1.5倍(上限は降伏点235N/mm²・135N/mm²)。
- 有効細長比の上限(令第65条):圧縮材の有効細長比は柱200以下・柱以外250以下。有効細長比の制限は圧縮材が対象で、引張材には令第65条の制限はない。座屈低減係数νは有効細長比が大きいほど小さくなり、許容圧縮応力度が低減される。
一問一答
Q. 鉄骨造ルート1(許容応力度計算)で確認が必要な項目を3つ挙げよ(令第82条・令第65条・告示)。
答えを見る
①許容応力度確認:各部材・接合部の応力度が長期・短期許容応力度以下(令第82条第三号)。②幅厚比確認:フランジ・ウェブ等の幅厚比が告示の上限以下(告示・局部座屈防止)。③有効細長比確認:圧縮材の有効細長比が柱200以下・柱以外250以下(令第65条・全体座屈防止)。
Q. 幅厚比(告示)と有効細長比(令第65条)はそれぞれ何を防ぐための確認か。
答えを見る
幅厚比(告示)は板要素(フランジ・ウェブ)の「局部座屈」を防ぐための確認(b/t比の制限)。有効細長比(令第65条)は部材全体の「全体座屈(全体的な曲げ座屈)」を防ぐための確認(lk/i比の制限・圧縮材は柱200以下・柱以外250以下)。局部座屈と全体座屈は独立した現象であり、どちらも鉄骨圧縮材に必要な確認。
Q. R7.4.1改正で鉄骨造に新設された「ルート1-3」とは何か。対象はどのような建築物か。
答えを見る
高さ13m超16m以下の鉄骨造(法第20条第1項第三号)に対して適用できる計算ルート(令第81条第3項)。通常のルート1(許容応力度計算)に加えて、幅厚比・層間変形角等の鉄骨固有の検討が必要。R7.4.1改正前はこの規模(高さ13m超)の鉄骨造はルート2以上が必要だったが、改正で高さ基準が16mに引き上げられ、幅厚比・層間変形角等の鉄骨固有の検討を加えるルート1-3で対応できるようになった(構造規制の合理化)。
この記事のカテゴリの記事一覧は構造計算にまとめています。
参照
- 建築基準法施行令 第65条(圧縮材の有効細長比)
- 平成19年国土交通省告示第593号(ルート1の幅厚比等)
- 建築基準法施行令 第82条(許容応力度計算)
- 建築基準法施行令 第90条(鉄骨造の許容応力度)
- 平成12年建設省告示第2464号(鋼材等及び溶接部の許容応力度・基準強度)