鉄骨造の保有水平耐力計算とは?幅厚比区分・DS値・柱脚の靭性確保(令第82条の3)

ルート君

鉄骨造の保有水平耐力計算って、RC造と何が違うの?

令第82条の3の保有水平耐力計算では、幅厚比区分による部材の靭性評価・崩壊機構の形状・柱脚の固定度が重要な要素です。

ブレース構造(筋かい構造)とラーメン構造では耐震挙動が大きく異なり、DS値の選定方法も変わります。

計算ルートによって鉄骨造でのポイントはどう違うのか

計算ルート 鉄骨造での主な確認事項
ルート1(許容応力度計算) 柱・梁・接合部・柱脚の許容応力度確認。座屈低減係数・横座屈の考慮。
ルート2(許容応力度等計算) ルート1に加えて幅厚比FA〜FC区分の確認・FD区分は不可。層間変形角1/200・剛性率Rs≧0.6・偏心率Re≦0.15も確認。
ルート3(保有水平耐力計算) 崩壊機構の確認(梁崩壊形誘導)・幅厚比によるDS値選定・柱脚の靭性確認。

幅厚比区分によってDS値はどう変わるのか

幅厚比区分 靭性 ラーメン構造のDS値(梁崩壊形の場合)
FA 最も高い(局部座屈なし) 0.25
FB 高い 0.30
FC 中程度 0.35
FD 低い(局部座屈が生じやすい) 0.40〜0.50(ただしルート2では不可)

柱脚の形式によって靭性はどう変わるのか

鉄骨造では柱脚の形式(露出型・埋込型・根巻型)によって回転剛性・固定度が異なります。

露出型柱脚はアンカーボルトの伸び変形で靭性を発揮しますが、固定度が低いため変形が大きくなりやすいです。

埋込型・根巻型は剛性が高く、倒壊に対して有利ですが、柱脚部の応力集中に注意が必要です。

ブレース構造の耐震設計ではなぜ留意が必要か

ブレース(筋かい)が圧縮力を受けると座屈し、耐力が急激に低下します。

そのため、ブレース構造のDS値はラーメン構造より大きく(靭性が低く)設定されます。

引張ブレースと圧縮ブレースをX型に組み合わせる場合、圧縮ブレースの座屈後の挙動も含めて保有水平耐力を評価します。

ブレース構造がラーメン構造よりDS値が大きいのはなぜか

ラーメン構造は塑性ヒンジ(梁端・柱脚の塑性変形)によって地震エネルギーを吸収します。

変形しながら耐力を維持できるため、靭性が高くDS値が小さくなります。

一方、ブレース(筋かい)は圧縮力を受けると座屈し、座屈後は耐力が急激に低下します。

変形能力によるエネルギー吸収が小さいため、ブレース構造はラーメン構造より靭性が低くDS値が大きくなります。

これは「強さで抵抗する構造」と「変形で吸収する構造」の本質的な違いです。

試験で問われやすいポイント

  • 幅厚比区分とDS値:FA=0.25(最小)・FB=0.30・FC=0.35・FD=0.40〜0.50(ラーメン構造・梁崩壊形の場合)。ルート2でFD区分不可(FD→DS大→ルート3でも不利)。
  • 令和3年 学科4 問88(選択肢2誤):「ルート1-2では梁の保有耐力横補剛不要」は誤り。ルート1-2でも梁の横補剛が必要で、横座屈が生じると靭性が低下しDS値が増大する可能性がある。
  • ブレース(筋かい)構造のDS値はラーメン構造より大きい。X型ブレースの場合、圧縮ブレースが座屈した後も引張ブレースが耐力を保持するが、圧縮ブレースの有効細長比・断面が大きいほどDS値が増大する。

一問一答

Q. 鉄骨ラーメン造でFA区分(DS=0.25)を達成するための条件は?

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A. 幅厚比がFA区分(最小)であること、かつ梁崩壊形(全体崩壊形)であること、かつ梁の横座屈が生じないよう保有耐力横補剛が確保されていること(これらの複合条件をすべて満たす必要がある)。

Q. ブレース構造でDS値がラーメン構造より大きくなる主な理由は?

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A. 圧縮力を受けたブレースが座屈すると耐力が急激に低下し、変形能力(靭性)が著しく小さくなるため。ラーメン構造の塑性ヒンジによる変形吸収とは異なり、座屈後の耐力回復がないことが靭性低下の主因。

Q. 露出型・埋込型・根巻型の各柱脚形式で剛性が高い順序は?

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A. 一般に埋込型>根巻型>露出型の順で剛性(固定度)が高い。露出型はアンカーボルトの伸び・ベースプレートの変形により回転が生じやすく固定度が低い。設計では柱脚の固定度に応じた応力評価が必要。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第65条(圧縮材の有効細長比)/幅厚比の区分は昭和55年告示第1792号
  • 建築基準法施行令 第82条の2(層間変形角)/第82条の6第二号(剛性率・偏心率)
  • 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算)
  • 昭和55年建設省告示第1792号(DSの数値)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。