木造中規模建築物の構造計算合理化とは?R7.4.1改正で変わったルート区分(令第36条の2・令第81条)
ルート君
木造の3階建てって、大規模な構造計算が必要なの?
R7.4.1(2025年4月1日)施行の改正により、3階建て以下かつ高さ16m以下の木造建築物は、ルート2以上の大規模な構造計算が不要になりました。令第36条の2の木造規模区分の見直しがその根拠です。
あわせて、令第81条第3項には鉄骨造向けのルート1-3が新設され、高さ13m超16m以下の鉄骨造建築物に適用されます。
建築基準法施行令 第36条の2第一号(R7.4.1改正後・木造の規模区分)
法第20条第1項第二号の政令で定める建築物のうち木造のものは、次に掲げるものとする。
一 4階以上のもの、または高さが16mを超えるもの
改正前はどんな規模の木造建築物に大規模計算が必要だったのか
旧規定(〜2025年3月)では、令第36条の2第一号(木造)の要件は「高さ13m超または軒高9m超」でした。
この基準を超えた木造建築物は法第20条第1項第二号に区分され、令第81条第2項のルート2(許容応力度等計算)以上の構造計算が必要とされていました。
3階建て木造でも高さが13mに近づけば旧第一号に該当し、保有水平耐力計算(ルート3)まで求められるケースもありました。これが木造中規模建築物の設計・コスト面での障壁になっていました。
R7.4.1改正でルート区分はどう変わったのか(改正前後の対比)
| 項目 | 旧規定(〜2025年3月) | 現行規定(R7.4.1〜) |
|---|---|---|
| 令第36条の2第一号 (木造・第二号建築物の要件) |
高さ13m超 または軒高9m超 |
4階以上 または高さ16m超 |
| 令第36条の2第五号 (木造・第二号建築物の要件) |
3階建て以上または延べ面積500㎡超のもの | 3階建て以上 または延べ面積300㎡超(第一号を除く) |
| 3階建て・高さ14m木造の区分 | 旧第一号(高さ13m超)→ 第二号建築物 → ルート2以上が必要 |
第五号(3階建て以上)→ 第二号建築物 → ルート1(令第81条第3項)で対応可能 |
| 必要最低ルート(3階建て・高さ16m以下) | ルート2以上(許容応力度等計算) | ルート1(令第82条各号・令第82条の4) |
改正前後の規模区分の変化は、国土交通省の資料(下図)でも整理されています。
改正のポイント
改正後の現行規定では、木造3階建てで高さ16m以下であれば令第36条の2第一号(第二号建築物の上位区分)には該当しません。第五号(3階建て以上・延べ面積300㎡超)として法第20条第1項第二号に区分されますが、適用される構造計算は令第81条第3項のルート1相当で足ります。
旧規定の「高さ13m超」「軒高9m超」という数値は現行規定では廃止されています。試験では改正後の数値(4階・16m)で解答してください。
令第81条第3項に新設されたルート1-3とは何か(鉄骨造向け)
R7.4.1改正では、令第81条第3項に鉄骨造向けの新たな計算区分「ルート1-3」が追加されました。
建築基準法施行令 第81条第3項(R7.4.1新設・ルート1-3)
法第20条第1項第三号に掲げる建築物のうち、高さが13mを超え16m以下の鉄骨造の建築物については、令第82条各号の計算に加え、幅厚比・層間変形角・水平力に対する安全性等の確認(ルート1-3固有の検討)を行うことを要する。
| ルート | 根拠条文 | 対象 | 計算内容 |
|---|---|---|---|
| ルート1 | 令第81条第3項 | 法第20条第1項第三号の小規模建築物(一般) | 令第82条各号+令第82条の4の計算 |
| ルート1-3(新設) | 令第81条第3項(R7.4.1〜) | 高さ13m超16m以下の鉄骨造(法第20条第1項第三号) | 令第82条各号+幅厚比・層間変形角等の鉄骨造固有の検討 |
| ルート2 | 令第81条第2項第二号イ | 法第20条第1項第二号の中規模建築物 | 許容応力度等計算(令第82条の2〜令第82条の4) |
ルート1-3は「ルート1の上乗せ」として位置付けられています。高さ13m超の鉄骨造はルート1の計算だけでは安全性の確認が不十分なため、幅厚比・層間変形角といった鉄骨造固有の検討を追加することで、ルート2に移行せずに対応できる仕組みです。
なぜ木造中規模建築物の計算が合理化されたのか
旧規定では木造の規模基準が「高さ13m超または軒高9m超」と定められていましたが、これは鉄筋コンクリート造(高さ20m超)・鉄骨造(高さ13m超)と比べて厳しい設定でした。
今回の改正は、脱炭素政策の一環として木造建築物の利用を促進する「木造化推進」の流れに沿ったものです。木造の中規模建築への規制を合理化することで、設計コストを下げ木造3階建て・中規模木造の普及を後押しすることが目的です。
四号特例縮小との連動はどうなっているのか
R7.4.1改正では、四号特例の縮小も同時に施行されました。
改正前の四号特例では、木造2階建てで延べ面積500㎡以下であれば確認申請での構造審査が省略できました。改正後は、木造2階建てで延べ面積200㎡を超えるものは新二号建築物(法第6条第1項第二号)に格上げされ、確認申請で構造関係図書(壁量計算書等)の提出が必要になっています。
| 建築物の規模 | 改正前の扱い | 改正後の扱い(R7.4.1〜) |
|---|---|---|
| 木造平屋建て・延べ面積200㎡以下 | 四号特例(審査省略) | 新三号建築物として審査省略継続 |
| 木造2階建て(延べ面積を問わず)・又は延べ面積200㎡超 | 四号特例(審査省略) | 新二号建築物→確認申請で構造関係図書の提出が必要 |
| 木造3階建て・高さ16m以下 | 旧第一号または第五号→ルート2以上が必要 | 第五号→ルート1(令第81条第3項)で対応可能 |
| 木造4階建て以上・高さ16m超 | 旧第一号→ルート2以上 | 現行第一号→ルート2以上(変わらず) |
四号特例縮小と令第36条の2改正は方向性が逆に見えますが、趣旨は一貫しています。小規模木造(平屋200㎡以下)の審査省略は維持しつつ、中規模木造(3階建て・中程度の規模)については計算要求を合理化して「重すぎず軽すぎない」バランスに整えた改正です。
試験で問われやすいポイント
- 令第36条の2第一号(木造)の改正数値:旧「高さ13m超または軒高9m超」→ 現行「4階以上または高さ16m超」。旧規定の数値(13m・9m)と現行規定の数値(4階・16m)を混同する誤答パターンが頻出。試験では現行規定(R7.4.1以降)で解答する。
- 木造3階建て・高さ16m以下の必要最低ルート:現行規定ではルート1(令第81条第3項)。「木造3階建てはルート2以上が必要」という旧規定の認識は誤り(改正後)。
- ルート1-3(令第81条第3項・R7.4.1新設)の対象:高さ13m超16m以下の鉄骨造(法第20条第1項第三号)。木造ではなく鉄骨造が対象である点に注意。
- 四号特例縮小との連動:木造2階建ては延べ面積にかかわらず新二号建築物に格上げ(確認申請で構造関係図書の提出が必要)。審査省略が続く新三号は平屋かつ200㎡以下のみ。木造3階建て・高さ16m以下はルート1で対応可能(計算合理化)。両者は同一のR7.4.1改正で施行。
一問一答
Q. R7.4.1改正後、木造3階建て・高さ14m・延べ面積250㎡の建築物に必要な最低の構造計算ルートは何か。
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ルート1(令第81条第3項)。現行規定では木造の令第36条の2第一号は「4階以上または高さ16m超」であり、この建築物は第一号非該当。第五号(3階建て以上・延べ面積300㎡超のいずれか)に該当し法第20条第1項第二号となるが、必要最低の構造計算は令第81条第3項のルート1(令第82条各号+令第82条の4)で足りる。旧規定では高さ13m超として第一号に該当しルート2以上が必要だった。
Q. ルート1-3(令第81条第3項・R7.4.1新設)の適用対象建築物を答えよ。
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高さ13m超16m以下の鉄骨造の建築物で、法第20条第1項第三号に区分されるもの。木造ではなく鉄骨造が対象。令第82条各号の計算に加えて幅厚比・層間変形角等の鉄骨造固有の検討が必要(令第81条第3項)。
Q. R7.4.1改正前(旧規定)と改正後(現行規定)で、令第36条の2第一号(木造)の規模要件はどう変わったか。
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旧規定:高さ13m超または軒高9m超→ 現行規定:4階以上または高さ16m超。旧規定の「13m超・9m超」という数値は現行では廃止。改正により木造3階建て・高さ16m以下は第一号(大規模計算必要)から外れ、ルート1で対応可能になった。
Q. R7.4.1改正後、木造2階建て・延べ面積220㎡の建築物は四号特例の対象か。
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対象外。木造2階建ては「二以上の階数を有する」ため延べ面積にかかわらず新二号建築物(法第6条第1項第二号)となり、確認申請で壁量計算書等の構造関係図書の提出が必要(四号特例縮小)。審査省略が続く新三号は平屋かつ200㎡以下に限られる。
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参照
- 建築基準法 第20条第1項(構造耐力)
- 建築基準法 第6条第1項(建築確認を要する建築物)
- 建築基準法 第6条の4第1項第三号(確認の特例)
- 建築基準法施行令 第36条の2(構造計算が必要な建築物)
- 建築基準法施行令 第81条(構造計算の種類)
- 令和6年政令第46号(建築基準法施行令の一部改正・R7.4.1施行)