限界耐力計算とは?損傷限界・安全限界の2段階確認と仕様規定の扱い(令第82条の5)

ルート君

限界耐力計算って、保有水平耐力計算と何が違うの?

限界耐力計算は、損傷限界と安全限界の2段階で建物の耐震性能を確認する計算方法です。

限界耐力計算は、令第81条第2項第一号ロに基づく計算方法で、2000年の建築基準法改正で導入されました。

「損傷限界」と「安全限界」の2段階で建物の性能を確認する、より合理的な耐震設計手法です。

限界耐力計算ではどんな2段階の確認をするのか(令第82条の5)

建築基準法施行令 第82条の5(限界耐力計算)

第一号:積雪時及び暴風時を除く常時並びに中程度の地震が発生した場合(稀地震動)において、(中略)損傷限界変位以下であることを確かめること。

第二号:積雪時及び暴風時並びに大規模の地震が発生した場合(極稀地震動)において、(中略)安全限界変位以下であることを確かめること。

設計の段階 対象とする地震 確認内容 根拠
損傷限界の確認 稀地震動(再現期間約50年) 損傷限界変位 ≧ 稀地震の応答変位 令第82条の5第一号
安全限界の確認 極稀地震動(再現期間約500年) 安全限界変位 ≧ 極稀地震の応答変位 令第82条の5第二号

従来のルート計算とどう違うのか

限界耐力計算では、地震荷重を建物の応答(変位・加速度)として評価します。

従来の等価静的地震力(令第88条の方法)ではなく、地盤の特性・建物の固有周期・非線形応答を考慮した地震入力を用います。

従来の計算(ルート1〜3) 限界耐力計算
等価静的地震力(Ci × W) 応答スペクトルに基づく変位・加速度で評価
応力≦許容応力度(弾性設計) 塑性変形を直接評価
仕様規定の多くが適用 耐久性等関係規定のみ適用(令第36条第2項第二号)

仕様規定の多くが適用除外になるのはなぜか(令第36条第2項)

限界耐力計算を採用する場合は、耐久性等関係規定のみ適用され、その他の仕様規定(帯筋間隔・幅厚比等)は適用除外となります(令第36条第2項第二号)。

これは、計算によって部材の変形能力を直接評価するため、仕様規定と計算を二重に適用する必要がないためです。

構造計算適合性判定は必要か

限界耐力計算を採用する建築物は、構造計算適合性判定が必要です(法第6条の3)。

なぜ限界耐力計算に2段階の確認が必要なのか

従来のルート1〜3の計算は、等価静的地震力を用いた弾性範囲での設計です。

しかし実際の大地震時には建物は弾性限界を超えた塑性変形をしながら崩壊を免れます。

この「損傷は許容するが倒壊は防ぐ」という2段階の耐震性能目標を定量的に確認するための方法が限界耐力計算です。

損傷限界(稀地震動)では「ある程度の地震でも損傷しない」ことを確認し、安全限界(極稀地震動)では「大地震でも倒壊しない」ことを確認します。

この2段階設計は、2000年改正で性能規定化が進んだ流れの中で導入された、より合理的な耐震設計手法です。

試験で問われやすいポイント

  • 限界耐力計算の2段階確認(令第82条の5):①損傷限界確認(稀地震動・令第82条の5第一号)と②安全限界確認(極稀地震動・令第82条の5第二号)の2段階。安全限界=倒壊防止、損傷限界=損傷防止。
  • 令和4年 学科4 問25(選択肢4正):「限界耐力計算では、耐久性等関係規定以外の構造強度に関する仕様規定は適用しなくてよい」は正しい記述。令第36条第2項第二号により限界耐力計算では耐久性等関係規定以外の仕様規定が免除される。
  • 適合性判定の要否:限界耐力計算は「特定構造計算基準」であり、構造計算適合性判定が必要(法第6条の3)。「限界耐力計算は高度だから適合性判定不要」という誤解に注意。適合性判定不要なのは大臣認定ルート(令第81条第1項)。

一問一答

Q. 限界耐力計算の損傷限界確認と安全限界確認の対象とする地震動の違いを述べよ(令第82条の5)。

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損傷限界確認:稀地震動(再現期間50年程度・Co=0.2相当)に対して応答変位が損傷限界変位以下であることを確認(令第82条の5第一号)。安全限界確認:極稀地震動(再現期間500年程度・Co=1.0相当)に対して応答変位が安全限界変位以下であることを確認(令第82条の5第二号)。

Q. 限界耐力計算を採用した場合、構造計算適合性判定は必要か(法第6条の3)。

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必要。限界耐力計算は「特定構造計算基準」に該当するため(令第81条第2項第一号ロ)、法第6条の3の構造計算適合性判定が必要(令和4年 学科4 問25令和5年 学科3 問11)。適合性判定不要なのは大臣認定ルート(令第81条第1項)のみ。

Q. 限界耐力計算と従来のルート1〜3の計算の最大の違いは何か。

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地震荷重の評価方法の違いが最大の特徴。ルート1〜3は「等価静的地震力(Ci×W)」を用いる弾性設計だが、限界耐力計算は「応答スペクトルに基づく変位・加速度」で評価し塑性変形を直接確認する。また仕様規定の多くが免除される(耐久性等関係規定のみ適用)点も大きな違い(令第36条第2項第二号)。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第81条第2項第一号ロ(限界耐力計算の規定)
  • 建築基準法施行令 第82条の5(限界耐力計算)
  • 建築基準法施行令 第36条第2項第二号(仕様規定の適用除外)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。