構造計画とは?剛性バランス・偏心抑制・ルート選択への影響(令第82条の2)

ルート君

構造計画って、設計のどの段階で何を考えればいいの?

構造計画は、令第82条の2が定める剛性バランスと偏心抑制を意識した、ルート選択に影響する配置計画のことです。

構造計画とは、建物の構造形式・平面形状・耐力要素の配置等を、構造安全性・経済性・施工性の観点から検討することです。

設計計算(構造計算ルートの選択)より前段の段階で、構造上望ましい計画を行うことで、後の計算上の問題(剛性率偏心率の基準値超過等)を防ぐことができます。

地震に強い建物形状の原則はどんなものか

原則 内容 関連する規定
シンプルな平面形状 正方形・長方形に近い平面は偏心が生じにくく、構造上有利 偏心率Re(令第82条の6第二号ロ)
均等な階剛性 各階の変形が均等になるよう耐力要素を分散配置する 剛性率Rs(令第82条の6第二号イ)
重量の上部集中を避ける 上層階が重いほど転倒モーメントが大きくなり柱・基礎への負担が増す 設計用地震力Qi(令第88条・Ai係数)
耐力要素の対称配置 耐震壁・ブレースを平面的に対称に配置して偏心を小さくする 偏心率Re(令第82条の6第二号ロ)

構造計画の良し悪しが計算ルートにどう影響するのか

構造計画の段階で剛性率・偏心率を基準値内に収める計画とすれば、ルート2での設計が可能になります。

剛性率・偏心率が基準値を超える計画の場合は、ルート3(保有水平耐力計算)が必要です。

ルート3では形状係数Fesが1.0を超えて必要耐力が増大するため、計画段階での剛性バランスの検討が設計の効率化に直結します。

ピロティ・セットバックで構造計画上なぜ注意が必要なのか

ピロティ・吹き抜けは建築意匠上有効ですが、その階の剛性が著しく低下し、剛性率Rs < 0.6 となりやすいです。

ピロティを採用する場合は、1階に耐震要素(耐震壁・ブレース)を追加するか、ルート3での設計を前提とした計画が必要です。

セットバック(上階が小さくなる平面)は、セットバック直下階の地震力が急増するため、Ai係数の増大と柱・耐力要素の応力集中に注意が必要です。

構造種別の選択はどんな観点で判断するのか

構造種別 特徴 適した規模・用途
RC造 剛性・耐力が高い。遮音性・耐火性に優れる。 中層〜高層の集合住宅・事務所・学校等
鉄骨造 軽量で引張強度が高い。大スパン・大空間に適する。 工場・倉庫・体育館・高層ビル等
木造 軽量・施工が容易。低層住宅に広く採用される。 2〜3階建て以下の住宅・小規模施設
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート) RC造の剛性と鉄骨造の靭性を兼ね備える。 超高層建築物の下層部・柱断面を小さくしたい場合等

なぜ構造計画の段階で剛性・偏心バランスを検討するのか

構造計算は「決まった平面計画・断面に対して安全かどうかを確認する」プロセスです。

計算の結果、剛性率や偏心率が基準値を外れた場合、設計変更(耐震壁の追加・断面変更)またはより高いルート(ルート3)への移行が必要になります。

設計の後半でルート変更が生じると設計コスト・時間が大幅に増加します。

「初期の構造計画段階で剛性・偏心バランスを意識した建物形状と耐力配置を決める」ことで、ルート2での設計を可能にし、設計の効率化とコスト抑制につながります。

建築基準法がルート2の要件として剛性率・偏心率を設けているのは、こうした「計画段階での品質管理」を法的に担保する意味があります。

試験で問われやすいポイント

  • ピロティ(1階開放)→1階の水平剛性が低下→Rs<0.6(特定階への変形集中)→Fes>1.0→Qun増大令和2年 学科4 問94)。対策:1階に耐震壁・ブレース追加でRs改善、またはルート3への移行で保有水平耐力を確保。
  • セットバック(上階が小さい平面)→セットバック直下階に応力集中・地震力急増。Ai係数(上階ほど大)との相乗効果で、セットバック直下階の応力設計に特に注意が必要。
  • 耐力要素の対称配置→重心Gと剛心CRの一致→偏心距離e=0→偏心率Re=0(最も有利)。耐震壁を平面中心付近に均等配置することでRe低下・Fes=1.0に近づける(令第82条の6第二号ロ)。

一問一答

Q. ピロティ構造(1階が柱のみ)の構造計画上の主な問題点と設計上の対処方法を述べよ。

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A. 問題点:1階の水平剛性が著しく低下し剛性率Rs<0.6(特定階への変形集中)になりやすい。Rs<0.6はFes(形状係数)のFs増大につながり、ルート2ではQun(必要保有水平耐力)が大幅増大する(R2問94)。対処方法:①1階に耐震壁・ブレースを追加してRs≧0.6に改善、または②ルート3(保有水平耐力計算)を採用してFesを計算に組み込み設計する。

Q. セットバック(上階平面が小さくなる建物)で構造計画上特に注意すべき点は?

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A. セットバックにより、セットバック直下の階(段差の生じる層)に地震力・応力が集中する。上層部の地震力Qiの合計がセットバック直下階の柱・耐力要素に集中して伝達されるため、この階の応力設計が重要。またAi係数(上層ほど大)と相まって応力が増大する。対策:セットバック階に耐力要素(耐震壁・柱断面増大)を集中配置し応力に対応する。

Q. 偏心率Reを小さくするための構造計画上の対策を2つ挙げよ。

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A. ①耐震壁を平面上対称に配置する(X・Y方向それぞれに均等配置):重心Gと剛心CRを一致させて偏心距離e=0→Re=0(理想)。②弾力半径reを大きくする(Re=e/re):外周付近に耐震壁を配置して全体の水平剛性の分布を広げ弾力半径を増大させる→Reが小さくなる。平面コーナー付近への耐震壁集中はe・re両者に効果があり有効。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第82条の2(層間変形角)/第82条の6第二号(剛性率・偏心率)
  • 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算)
  • 建築基準法施行令 第88条(地震力の算定・Ai係数)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。