短柱とは?腰壁・垂れ壁によるせん断破壊と帯筋増配・スリットによる対策(令第77条)

ルート君

短柱ってなに?なんで危険なの?

短柱は、腰壁や垂れ壁によって柱の有効長さが短くなり、せん断破壊を起こしやすくなった柱のことです。

短柱とは、腰壁や垂れ壁によって柱の内法高さが拘束され、柱の有効高さが短くなった状態の柱です。

短柱は地震時に曲げ変形よりもせん断破壊が先行しやすく、耐震性能が著しく低下します。1981年以前の建築物に多く見られる構造的な脆弱性です。

短柱はどのようにして生じるのか

RC造のラーメン架構では、窓下に設ける腰壁(腰高の壁)や窓上の垂れ壁(たれかべ)が柱に拘束されると、柱の内法高さが設計値より短くなります。

原因となる要素 発生箇所 効果
腰壁(こしかべ) 窓の下部に設ける壁。柱の下部を拘束する。 柱の有効高さを上部に限定し、内法高さを短縮する。
垂れ壁(たれかべ) 窓の上部・梁の下に設ける壁。柱の上部を拘束する。 柱の有効高さを下部に限定し、内法高さを短縮する。
腰壁+垂れ壁の組み合わせ 上下両側から拘束 内法高さが特に短くなり、最もせん断破壊しやすい。

短柱のせん断破壊はなぜ危険なのか

柱の変形能力と破壊モードは、せん断スパン比(有効高さ÷柱せい)によって変わります。

せん断スパン比 破壊モードの傾向 特徴
大きい(普通柱) 曲げ降伏先行(望ましい) 変形能力が大きく、靭性を発揮できる。DS値が小さく設定される。
小さい(短柱) せん断破壊先行(危険) 変形能力がほとんどなく、急激な耐力低下が生じる。脆性的な崩壊につながる。

帯筋を増やすことで短柱問題はどう改善されるのか(令第77条)

令第77条は、RC造の柱の帯筋(フープ筋)の最大間隔・径・比率を定めています。

帯筋を増配(間隔を密にする)することで、柱のせん断耐力と変形能力を高め、短柱化した場合でもせん断破壊を防止できます。

規定項目 標準規定値 根拠
帯筋の最大間隔(一般部) 15cm以下(端部は10cm以下)かつ最も細い主筋径の15倍以下 令第77条第三号
帯筋比(pw) 0.2%以上 令第77条第四号
帯筋の径 6mm以上 令第77条第三号

保有水平耐力計算(ルート3)でより高い靭性ランク(小さいDS値)を得るには、帯筋比をpw ≧ 0.3%以上に高めるなどの措置が告示(告示第1792号)に規定されています。

構造スリットを設けると短柱化をどう防げるのか

腰壁・垂れ壁が存在しても、柱との間に構造スリット(縁切り)を設けることで、壁と柱の一体化(拘束)を防ぎ、柱の有効高さを全高に維持できます。

スリットの種類 位置 効果
完全スリット 腰壁・垂れ壁の両端(柱際)の全断面を切断 壁の拘束を完全に遮断。柱の有効高さを全高に確保できる。
部分スリット 柱際の上端または下端のみ切断 拘束を軽減するが、完全には解消しない。設計計算で残存拘束を考慮する必要がある。

令第74条(コンクリート強度)と短柱対策はどう関係するのか

令第74条はRC造のコンクリートの設計基準強度と調合管理強度を定めており、高強度コンクリートを使用する場合の規定が示されています。

短柱の場合、コンクリート強度が高いほどせん断耐力も高まりますが、スリットや帯筋の増配による対策が基本となります。

なぜ短柱のせん断破壊は建物全体の崩壊につながるのか

せん断破壊は曲げ破壊と異なり、急激な耐力喪失(脆性的な崩壊)を伴います。

曲げ降伏先行の柱は変形しながらも耐力を維持しますが、せん断破壊した柱は瞬時に耐力がほぼゼロになります。

その結果、当該階の水平力を支える柱が機能を失い「層崩壊」が起きます。

1981年以前の旧耐震基準の建物に短柱が多いのは、旧基準では地震力の設定が小さく柱のせん断耐力の検討が不十分だったためです。

既存不適格建築物の耐震改修では、短柱の解消(スリット設置・帯筋増配)が重要な対策となります。

構造スリットを入れると耐力が下がるのか

完全スリットを設けると腰壁・垂れ壁の拘束が切れ、見かけ上の水平剛性は「下がる」ように見えます。

しかし実際には、短柱のせん断破壊(最悪の破壊モード)を回避し、柱の変形能力(靭性)が確保されます。

スリットの有無で変わるのは「耐力の大小」ではなく「破壊モードの脆性・靭性」です。

この点が試験で問われます(令和3年 学科4 問95 選択肢2)。

試験で問われやすいポイント

  • 令和3年 学科4 問95(正答2・不適当):「そで壁付き柱の柱とそで壁との間に耐震スリットを設ける」ことは、柱の「耐力の向上」ではなく「変形能力の向上(短柱化防止)」。「耐力向上の方法」として述べたことが誤り。枠付き鉄骨ブレース増設が耐力向上の方法(選択肢3正)。
  • 令和3年 学科4 問95 選択肢1正:垂れ壁や腰壁が付いた柱は、大地震時に付かない柱より先に破壊するおそれがある。内法高さ短縮→短柱化→せん断破壊先行→急激な耐力低下。
  • 完全スリット vs 部分スリットの違い:完全スリット(柱際全断面を切断)は壁の拘束を完全遮断→有効高さを全高に維持。部分スリットは残存拘束があるため、設計計算でその効果を考慮する必要がある。

一問一答

Q. 腰壁・垂れ壁が付いた柱(短柱)が地震時に問題となる理由は何か(令和3年 学科4 問95)。

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内法高さが短縮→せん断スパン比が小さくなり、せん断破壊が先行する。変形能力がほとんどなく急激な耐力低下(脆性的崩壊)が生じるため、腰壁・垂れ壁のない柱より先に破壊するおそれがある。

Q. 耐震スリットを柱とそで壁の間に設けることの効果は何か。「耐力の向上」か「変形能力の向上」か(令和3年 学科4 問95選択肢2)。

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変形能力の向上(耐力低下の防止)。壁の拘束を解除して短柱化を防ぐため、柱の変形能力(靭性)が向上する。「耐力の向上」とするのは誤り(R3問95の正答理由)。

Q. 短柱に対する対策として帯筋増配(pw≧0.3%以上)がある。帯筋増配の効果は何か。

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柱のせん断耐力と変形能力を高め、せん断破壊を抑制する。保有水平耐力計算(ルート3)でpw≧0.3%以上とすると靭性ランクが上がりDS値を小さく設定できる(告示第1792号)。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第74条(コンクリートの設計基準強度)
  • 建築基準法施行令 第77条(RC造柱の配筋規定・帯筋)
  • 昭和55年建設省告示第1792号(構造特性係数DS・靭性ランク)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。