時刻歴応答解析とは?超高層・免震・制振への適用と令第81条の位置づけ
ルート君
時刻歴応答解析って、どんな計算をするの?
時刻歴応答解析は、地震波を時刻ごとに入力して建物の応答を解析する計算方法で、超高層建築物に適用されます。
時刻歴応答解析は、実際の地震動(加速度時刻歴)を建物モデルに入力し、各時刻の応答(変位・加速度・部材応力)を数値的に求める解析手法です。
建築基準法上は令第81条第1項の大臣認定ルートで要求される計算方法であり、超高層建築物・免震建築物・制振建築物等に適用されます。
時刻歴応答解析はどんな建物に必要なのか
建築基準法施行令 第81条第1項(大臣認定ルート)
法第20条第1項第一号の規定により、建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準は、(中略)国土交通大臣が定めた方法により、又は国土交通大臣の認定を受けた方法により、安全性を確かめることとする。
| 適用場面 | 根拠 |
|---|---|
| 高さ60mを超える超高層建築物 | 令第81条第1項・平成12年建設省告示第1461号 |
| 免震建築物(大臣認定による設計) | 令第81条第1項・平成12年建設省告示第2009号(免震建築物の構造方法) |
| 制振建築物(大臣認定による設計) | 令第81条第1項(大臣認定ルート・時刻歴応答解析) |
| 特殊な構造形式(吊り構造・張弦梁等) | 令第81条第1項(大臣認定ルート) |
入力地震動はどうやって設定するのか
時刻歴応答解析に用いる入力地震動は、建設地の地盤特性・地震活動度を考慮して設定します。
| 種別 | 内容 |
|---|---|
| 観測記録地震波 | 過去の地震で観測された実記録(El Centro 1940・神戸海洋気象台 1995等)を用いる |
| 告示波(模擬地震動) | 告示の応答スペクトルに適合するよう人工的に作成した地震波。レベル1(稀地震動・再現期間約50年)とレベル2(極稀地震動・再現期間約500年)の2レベルを設定。原則3波以上使用(告示第1461号)。 |
| サイト固有波 | 建設地固有の地盤条件から作成した地震波。重要度の高い建物に用いることがある。 |
解析モデルはどのように作るのか
高さ60mを超える長周期建物では、等価静的地震力(Ci×W)による近似誤差が大きくなります。
ルート1〜3では長周期特性や非線形挙動を十分に評価できないため、時刻歴応答解析が必要とされます。
時刻歴応答解析に用いる建物モデルは、建物の非線形挙動(弾塑性・座屈等)を再現できる必要があります。
一般的には、①各層を1質点として積み上げた「多質点せん断型モデル」または②各部材を梁要素でモデル化した「フレームモデル」が用いられます。
部材の復元力特性(ヒステリシスモデル)の設定が解析精度に大きく影響します。
等価静的解析(ルート1〜3)と何が違うのか
| 項目 | 等価静的解析(ルート1〜3) | 時刻歴応答解析 |
|---|---|---|
| 地震入力の表現 | 等価静的地震力(Ci × W) | 実際の地震動時刻歴(加速度波形) |
| 動的効果 | Ai分布・Rt等で近似的に考慮 | 直接評価 |
| 非線形挙動 | 保有水平耐力で一部考慮(崩壊時のみ) | 全変形過程で直接評価 |
| 適用可能な建物 | 高さ60m以下の一般建築物 | 高さ60m超・免震・制振等 |
試験で問われやすいポイント
- 時刻歴応答解析は令第81条第1項の大臣認定ルートで要求される計算方法→適合性判定は不要(R2問53・R5問11)。超高層(60m超)・免震・制振の3種類が主な適用場面(超高層=告示第1461号、免震=告示第2009号、制振=大臣認定ルート)。
- 入力地震動:超高層建築物の告示第1461号では告示の応答スペクトルに適合した地震波を原則3波以上使用して解析。稀地震動(レベル1・50年)と極稀地震動(レベル2・500年)の2レベルを設定。
- 等価静的解析(ルート1〜3)ではAi分布・Rt等で動的効果を近似的に考慮するが、時刻歴では動的効果・非線形挙動を直接評価。長周期高層建物では等価静的の近似が大きくずれる→時刻歴が必要。
一問一答
Q. 時刻歴応答解析が建築基準法上「義務付けられる」建築物の主な例を3つ挙げよ。
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A. ①高さ60mを超える超高層建築物(令第81条第1項・告示第1461号)、②大臣認定ルートによる免震建築物(告示第2009号)、③大臣認定ルートによる制振建築物(専用告示はなく時刻歴応答解析による大臣認定)。いずれも令第81条第2項のルート1〜3・限界耐力計算では対応不可で、大臣認定ルートが必要となる(適合性判定は不要)。
Q. 超高層建築物(告示第1461号)の時刻歴応答解析で使用する入力地震波の最低波数と選定方法は?
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A. 原則3波以上を使用する(告示第1461号)。告示の応答スペクトル(稀地震動・極稀地震動の2レベル)に統計的に適合した地震波を設定する。観測記録地震波・告示波(人工地震動)・サイト固有波(建設地固有波)の組み合わせを用い、3波の応答の平均値や包絡値で設計する。
Q. 等価静的解析(ルート1〜3の地震力計算)と時刻歴応答解析の最大の違いは何か?
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A. 等価静的解析はCi×Wによる水平力を静的荷重として与えるのに対し、時刻歴応答解析は実際の地震動(加速度の時間変化)を建物モデルに直接入力し、各時刻の応答(変位・速度・応力)を動的に追跡する。長周期特性・非線形挙動・部材の変形履歴(ヒステリシス)を全変形過程で評価できる点が最大の違い。
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参照
- 建築基準法施行令 第81条第1項(大臣認定に基づく構造計算)
- 平成12年建設省告示第1461号(超高層建築物の構造計算基準)
- 平成12年建設省告示第2009号(免震建築物の構造方法に関する技術的基準)